グラビス・アーキテクツ 古見代表取締役 対談【前編】なぜいま官民越境なのか

グラビス・アーキテクツ 古見代表取締役 対談【前編】なぜいま官民越境なのか

今回はGLAVISグループ、グラビス・アーキテクツの代表古見彰里様と、VOLVE代表取締役の吉井が「なぜいま官民越境なのか」をテーマに対談を行いました

古見さま

古見 彰里(こみ あきのり)

 大手コンサルティングファームのパブリックセクターチームにて公共機関向けコンサルティングおよびプロジェクトマネジメントを多数経験。自治体向けサービスの統括を行う中で、地方の活性化を強く志向。
 その後、開発センターを北海道で立上げ。2010年にグラビス・アーキテクツ株式会社を設立。公共機関や地方の中堅企業向けにテクノロジーを活用したコンサルティングを展開。

古見さま

古見 彰里(こみ あきのり)

 大手コンサルティングファームのパブリックセクターチームにて公共機関向けコンサルティングおよびプロジェクトマネジメントを多数経験。自治体向けサービスの統括を行う中で、地方の活性化を強く志向。
 その後、開発センターを北海道で立上げ。2010年にグラビス・アーキテクツ株式会社を設立。公共機関や地方の中堅企業向けにテクノロジーを活用したコンサルティングを展開。


吉井

吉井 弘和(よしい ひろかず)

 VOLVE株式会社代表取締役、慶應義塾大学総合政策学部准教授。
 1981年、東京都生まれ。2004年東京大学理学部数学科卒業。11年米国コロンビア大学及び英国ロンドン大学政治経済学院より公共経営学修士(MPA)を取得。
 04年マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社入社、同ドイツ支社転勤、英国保守党本部インターン、同社アソシエイト・パートナー、社会保険診療報酬支払基金理事長特任補佐、厚生労働省保険局保険課課長補佐を経て現職。

古見さま

吉井 弘和(よしい ひろかず)

 VOLVE株式会社代表取締役、慶應義塾大学総合政策学部准教授。
 1981年、東京都生まれ。2004年東京大学理学部数学科卒業。11年米国コロンビア大学及び英国ロンドン大学政治経済学院より公共経営学修士(MPA)を取得。
 04年マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社入社、同ドイツ支社転勤、英国保守党本部インターン、同社アソシエイト・パートナー、社会保険診療報酬支払基金理事長特任補佐、厚生労働省保険局保険課課長補佐を経て現職。


官民越境キャリアの実践、コンサルティングファームから公共セクターへ

古見さま

古見さま

 官民越境というキャリアの作り方について、コンサルティング会社と官僚のご経験をされた吉井さんに、これまでのご経験からくる課題認識や、これからどういう社会を作っていくべきなのか、その中で越境のキャリア作りというのはどういう意味があるのかといった話を掘り下げて教えていただきたいと思っています。
 マッキンゼーではどんなお仕事をされていたでしょうか。

古見さま

古見さま

 官民越境というキャリアの作り方について、コンサルティング会社と官僚のご経験をされた吉井さんに、これまでのご経験からくる課題認識や、これからどういう社会を作っていくべきなのか、その中で越境のキャリア作りというのはどういう意味があるのかといった話を掘り下げて教えていただきたいと思っています。
 マッキンゼーではどんなお仕事をされていたでしょうか。

吉井

 最初の4年半は主に金融機関向けのコンサルティングで、その後留学を挟み、残り4年半は主にヘルスケア企業向けのコンサルティングをしていました。その頃に自治体の医療政策プロジェクトがいくつかあったので担当しています。

吉井
吉井

吉井

 最初の4年半は主に金融機関向けのコンサルティングで、その後留学を挟み、残り4年半は主にヘルスケア企業向けのコンサルティングをしていました。その頃に自治体の医療政策プロジェクトがいくつかあったので担当しています。

古見さま

古見さま

 ヘルスケアなどに取り組まれるなかで社会的な課題感や問題意識が生まれて、厚労省のキャリアに繋がったのでしょうか。

古見さま

古見さま

 ヘルスケアなどに取り組まれるなかで社会的な課題感や問題意識が生まれて、厚労省のキャリアに繋がったのでしょうか。

吉井

 マッキンゼーに入る頃から公共セクターに行きたいなとは思っていました。留学から戻ってきたマッキンゼーの東京オフィスは当時、公共系のプロジェクトはヘルスケア系か防衛省系だったんです。その中で政策領域としても社会保障には関心が高かったので。医療政策とヘルスケア企業の組み合わせでマッキンゼーの仕事を作っていこうかなと思いました。

吉井
吉井

吉井

 マッキンゼーに入る頃から公共セクターに行きたいなとは思っていました。留学から戻ってきたマッキンゼーの東京オフィスは当時、公共系のプロジェクトはヘルスケア系か防衛省系だったんです。その中で政策領域としても社会保障には関心が高かったので。医療政策とヘルスケア企業の組み合わせでマッキンゼーの仕事を作っていこうかなと思いました。

古見さま

古見さま

 その後、社会保険診療報酬支払基金(以下:支払基金)に転職されましたが、公共セクターに移ってからのお仕事の内容を教えていただいてもいいですか。

古見さま

古見さま

 その後、社会保険診療報酬支払基金(以下:支払基金)に転職されましたが、公共セクターに移ってからのお仕事の内容を教えていただいてもいいですか。

吉井

 当時の支払基金は支払基金改革をしなければならない、ということで主に命題は3つありました。
 1つ目は、効率的な運営という観点です。当時の支払基金は、職員が約4,300人、非常勤で月数日だけ働いてくださる医師などの審査委員が約5,000人、合計1万人ぐらいの方々が全国47の拠点で働く非常に巨大な組織です。
 2つ目は、審査基準の標準化という観点です。支払基金は医療費の審査をする機関ですが、審査をするからには基準がある。基準があると大抵の場合ローカルルールがある。同じ公的医療保険の世界の中で、場所によって受けられる医療とそうではない医療があるのはおかしいだろうということです。
 3つ目は、データヘルスのプラットフォームになるための改革という観点です。厚労省はデータヘルス改革として様々なヘルスケア関連のデータをプラットフォームに集めて、よりよく健康増進できるようにという取り組みをされています。審査支払機関は医療のレセプトという個人情報の塊のようなデータを扱っているので、そのようなプラットフォームに適しているんじゃないかということです。
 私は理事長特任補佐として、必要な時に必要なところに入る、民間企業でいう特にポートフォリオのない役員のような立場でした。

吉井
吉井

吉井

 当時の支払基金は支払基金改革をしなければならない、ということで主に命題は3つありました。
 1つ目は、効率的な運営という観点です。当時の支払基金は、職員が約4,300人、非常勤で月数日だけ働いてくださる医師などの審査委員が約5,000人、合計1万人ぐらいの方々が全国47の拠点で働く非常に巨大な組織です。
 2つ目は、審査基準の標準化という観点です。支払基金は医療費の審査をする機関ですが、審査をするからには基準がある。基準があると大抵の場合ローカルルールがある。同じ公的医療保険の世界の中で、場所によって受けられる医療とそうではない医療があるのはおかしいだろうということです。
 3つ目は、データヘルスのプラットフォームになるための改革という観点です。厚労省はデータヘルス改革として様々なヘルスケア関連のデータをプラットフォームに集めて、よりよく健康増進できるようにという取り組みをされています。審査支払機関は医療のレセプトという個人情報の塊のようなデータを扱っているので、そのようなプラットフォームに適しているんじゃないかということです。
 私は理事長特任補佐として、必要な時に必要なところに入る、民間企業でいう特にポートフォリオのない役員のような立場でした。




古見さま

古見さま

 私は国保をやっていたのでよくわかるんですけど、レセプトの審査をやる機関が47都道府県の基準を整理して標準化することは非常に大切だと思いました。具体的にどのように取り組まれたのでしょうか。

古見さま

古見さま

 私は国保をやっていたのでよくわかるんですけど、レセプトの審査をやる機関が47都道府県の基準を整理して標準化することは非常に大切だと思いました。具体的にどのように取り組まれたのでしょうか。

吉井

 ある特定の検査で、月に1回までしか行ってはいけない、という明確なルールが定まっているものは基本的にシステムで標準化をします。難しいものは、医師の判断が必要なものです。例えば特定の手術診療行為に対して非常に高額な医療材料であるカテーテルを何本使っていいか、は一概に文章でルールを規定するのが難しい。そうなると最後は人の判断によるところがあって、その判断も地域での相場感、一緒に働いている審査委員の方々の相場感でだんだん決まっていきます。当時はこういったものは保険者の方々からズレを指摘いただいて、基準を合わせていく進め方が中心でした。

吉井
吉井

吉井

 ある特定の検査で、月に1回までしか行ってはいけない、という明確なルールが定まっているものは基本的にシステムで標準化をします。難しいものは、医師の判断が必要なものです。例えば特定の手術診療行為に対して非常に高額な医療材料であるカテーテルを何本使っていいか、は一概に文章でルールを規定するのが難しい。そうなると最後は人の判断によるところがあって、その判断も地域での相場感、一緒に働いている審査委員の方々の相場感でだんだん決まっていきます。当時はこういったものは保険者の方々からズレを指摘いただいて、基準を合わせていく進め方が中心でした。

古見さま

古見さま

 なるほど。指摘の事案ごとに潰すというやり方ですね。

古見さま

古見さま

 なるほど。指摘の事案ごとに潰すというやり方ですね。

吉井

 そうですね。当時はそのやり方と、後からもう少し様々な事象をAIのようなものを入れてパターン化した上で、判断にブレがありそうなものを抽出して、基準作りのルートに乗せていくための仕組みづくりをすすめました。

吉井
吉井

吉井

 そうですね。当時はそのやり方と、後からもう少し様々な事象をAIのようなものを入れてパターン化した上で、判断にブレがありそうなものを抽出して、基準作りのルートに乗せていくための仕組みづくりをすすめました。

古見さま

古見さま

 ありがとうございます。支払基金で活動された後、厚労省に移られたきっかけを教えてください。

古見さま

古見さま

 ありがとうございます。支払基金で活動された後、厚労省に移られたきっかけを教えてください。

吉井

 もともと公共セクターへの想いは強く、支払基金に行く前からいずれは中央省庁に行きたいと思っていました。ただ私が具体的に転職に動き始めたのは30歳過ぎぐらいで、当時は中央省庁の中途採用はほとんどなかったので、先に支払基金に行きました。当初から、支払基金は3年ぐらいにしようということは決めていまして、そのタイミングで厚労省の求人を見つけました。

吉井
吉井

吉井

 もともと公共セクターへの想いは強く、支払基金に行く前からいずれは中央省庁に行きたいと思っていました。ただ私が具体的に転職に動き始めたのは30歳過ぎぐらいで、当時は中央省庁の中途採用はほとんどなかったので、先に支払基金に行きました。当初から、支払基金は3年ぐらいにしようということは決めていまして、そのタイミングで厚労省の求人を見つけました。

古見さま

古見さま

 厚労省ではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

古見さま

古見さま

 厚労省ではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

吉井

 私がいた保険課は支払基金の所管もしているので、今度は厚労省の立場で審査支払機関改革をやりました。また保険課は健康保険組合の所管もしており、健康保険組合や協会けんぽのデータを使った健康増進の取り組みの旗振りをやっていて、私はそこを中心に取り組みました。

吉井
吉井

吉井

 私がいた保険課は支払基金の所管もしているので、今度は厚労省の立場で審査支払機関改革をやりました。また保険課は健康保険組合の所管もしており、健康保険組合や協会けんぽのデータを使った健康増進の取り組みの旗振りをやっていて、私はそこを中心に取り組みました。

官民越境を通じて感じた両者のギャップ、いずれも経験することは勉強につながった

古見さま

古見さま

 コンサルティング会社と国家公務員。官民いずれも経験されているお立場で感じるギャップや問題意識があれば、教えていただきたいです。

古見さま

古見さま

 コンサルティング会社と国家公務員。官民いずれも経験されているお立場で感じるギャップや問題意識があれば、教えていただきたいです。

吉井

 様々な観点でのギャップがあると思います。ただそこで自分自身にどんな成長が望めるか、といった話で言うと、コンサルティングファームは当然クライアントがあって、その中にもプロジェクトチームのメンバーがいます。そのため、どちらかというと考えることや分析、もしくはそのディスカッションにフォーカスできるので、育ちやすいスキルは「問題解決や分析」が中心です。
 他方で中央省庁の場合は、例えば「公的医療保険財政が逼迫している」というのはほとんどの人が知っている。それを研究されている学者の方も多くいらっしゃいますし、シンクタンクも様々な政策提言をしています。そんな中で役人自身が新しいことを考えられるかというと、そうでもないところも多いかなと思っています。その意味では、考えることももちろん大事ですが、世の中にある数多のアイディアを吸収した上で、政策を作り、それをどう実現するかというところに時間の力点も置かれていると思います。1つの政策を実現するためには、様々な関係者の理解・合意が必要なので「合意形成」のようなスキルが磨かれる。
 とはいえ、コンサルにいたら調整しなくていいかというとそんなことないですし、役所にいたら問題解決しなくていいかというとそんなこともない。ただ、力点がかなり違うので両方を経験すると非常に勉強になります。

吉井
吉井

吉井

 様々な観点でのギャップがあると思います。ただそこで自分自身にどんな成長が望めるか、といった話で言うと、コンサルティングファームは当然クライアントがあって、その中にもプロジェクトチームのメンバーがいます。そのため、どちらかというと考えることや分析、もしくはそのディスカッションにフォーカスできるので、育ちやすいスキルは「問題解決や分析」が中心です。
 他方で中央省庁の場合は、例えば「公的医療保険財政が逼迫している」というのはほとんどの人が知っている。それを研究されている学者の方も多くいらっしゃいますし、シンクタンクも様々な政策提言をしています。そんな中で役人自身が新しいことを考えられるかというと、そうでもないところも多いかなと思っています。その意味では、考えることももちろん大事ですが、世の中にある数多のアイディアを吸収した上で、政策を作り、それをどう実現するかというところに時間の力点も置かれていると思います。1つの政策を実現するためには、様々な関係者の理解・合意が必要なので「合意形成」のようなスキルが磨かれる。
 とはいえ、コンサルにいたら調整しなくていいかというとそんなことないですし、役所にいたら問題解決しなくていいかというとそんなこともない。ただ、力点がかなり違うので両方を経験すると非常に勉強になります。

古見さま

古見さま

 厚労省は国全体を俯瞰した形での動きであり、様々な役割をその中で演じるんだろうなとお聞きして思いました。ご自分の中で、やりがいという点ではいかがでしょうか。

古見さま

古見さま

 厚労省は国全体を俯瞰した形での動きであり、様々な役割をその中で演じるんだろうなとお聞きして思いました。ご自分の中で、やりがいという点ではいかがでしょうか。

吉井

 やりがいもおっしゃる通り、全く異なります。コンサルティングファームで働いている時は、クライアントが考えもつかなかったようなことを考えたときや、クライアントが「なんとなくこうかな」と思っていたことを実際にファクトで証明して、それが意思決定・実行されることになったときは非常にやりがいを感じていました。
 役所においては、新しいことを考えるというよりも、なかなか動かなかったものを動かすことができたときに非常にやりがいを感じました。役所の場合、基本的には役人だけで意思決定ができません。ですので、自分自身で様々な関係者を説得することで、どう物事が動くかを考えて、それが実現するときにやりがいを感じました。民間の「意思決定」とは少し違う醍醐味かなと思います。

吉井
吉井

吉井

 やりがいもおっしゃる通り、全く異なります。コンサルティングファームで働いている時は、クライアントが考えもつかなかったようなことを考えたときや、クライアントが「なんとなくこうかな」と思っていたことを実際にファクトで証明して、それが意思決定・実行されることになったときは非常にやりがいを感じていました。
 役所においては、新しいことを考えるというよりも、なかなか動かなかったものを動かすことができたときに非常にやりがいを感じました。役所の場合、基本的には役人だけで意思決定ができません。ですので、自分自身で様々な関係者を説得することで、どう物事が動くかを考えて、それが実現するときにやりがいを感じました。民間の「意思決定」とは少し違う醍醐味かなと思います。

古見さま

古見さま

 私自身もクライアントが気づいていない視点でのご提言ができるとやりがいを感じます。
 厚労省は日本の医療や保険の制度そのものを動かしていく非常に大きな単位でのお仕事なので、そこでしか感じられないダイナミズムのようなものがあるんだろうなと思いました。

古見さま

古見さま

 私自身もクライアントが気づいていない視点でのご提言ができるとやりがいを感じます。
 厚労省は日本の医療や保険の制度そのものを動かしていく非常に大きな単位でのお仕事なので、そこでしか感じられないダイナミズムのようなものがあるんだろうなと思いました。

吉井

 コンサルの仕事って世の中の目に触れられることは少ないと思うのですが、役所の仕事は業界の専門誌まで含めると1週間に1回は必ず、場合によっては毎日何かしら報道されている世界なので、メディアという形で見えることもやりがいとして感じるところはあると思います。

吉井
吉井

吉井

 コンサルの仕事って世の中の目に触れられることは少ないと思うのですが、役所の仕事は業界の専門誌まで含めると1週間に1回は必ず、場合によっては毎日何かしら報道されている世界なので、メディアという形で見えることもやりがいとして感じるところはあると思います。




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