厚労省を2年で退職、サイボウズそしてUbieへ。キャリアを動かす「この仕事がしたい」という情熱

厚労省を2年で退職、サイボウズそしてUbieへ。キャリアを動かす「この仕事がしたい」という情熱

厚生労働省を2年で退職し、その後、業務改善アプリを手がけるサイボウズに転職。出産・子育てを経て、現在はAIをコア技術とし、生活者向けサービス「ユビー」や医療機関向けサービスパッケージ「ユビーメディカルナビ」などを開発・提供する医療スタートアップ・Ubie(ユビー)で活躍する渡部萌さん。

「その時々で『これが自分にとって最適だ』と思える選択をしてきた。今までの経験が今のキャリアにすべてつながっている」

そう話す渡部さんに、国家公務員からスタートアップへの“転身キャリア”について聞いた。

<プロフィール>
渡部萌さん
2018年に厚生労働省入省後、社会福祉法等改正などの政策に携わる。サイボウズ株式会社を経て2025年にUbie株式会社に入社、Public Affairs(政策渉外)担当。

大学時代に直面した「介護と医療」

──大学を卒業後、新卒で厚生労働省に入省されています。官僚の道を選んだきっかけは?

大学には実家から通っていたのですが、大学生のときに母の入院を経験したり、高齢になった祖父母の介護が必要になったりした経験が大きかったと思います。

「人が生きていくうえで、自分の意思とは関係ない困難によって、急に生きづらさを感じてしまう場面が世の中にたくさんある……」と思うようになって。それは防ぎにくいものではあるものの、「困難が生じた環境でも安心して暮らせる社会を作っていきたい」という気持ちが強くなりました。

大学では法学部で周りも国家公務員を志望する人がおり、もともと私も「世の中に広く影響を与えられる仕事」に関心がありました。その中でも厚生労働省を選んだのは、医療や介護の問題が自分自身にも起こることを痛感したからです。

不安な気持ちのままだと、人生は楽しく過ごせないじゃないですか? その不安をカバーできるのが厚労省だと思いました。

社会的インパクトの大きい法律改正

──2018年4月に入省されてからは、どんな仕事を担当したのでしょうか?

入省1年目は福祉系の施策を取りまとめる社会・援護局総務課に所属し、2年目からは社会・援護局地域福祉課で、法律改正の大きなプロジェクトに関わるようになりました。

入省2年目で取り組んだ法改正は、介護、障害、子育て、生活困窮など、それぞれの領域で独立していた制度を一体的に運用する「包括的な支援体制の整備」に関するものでした。大規模な検討会を開催したり、新聞などで取り上げられたりと、激務でしたが社会的なインパクトも同時に感じていました。

ただ一方で、すごくやりがいを感じていたかと問われると、私自身はそうでもなかったんです。

「社会の役に立つ仕事をしているのに、なぜ私はやりがいを感じないのだろう……」と考えたのですが、「目の前の困っている人を、たった一人でも自分の力で変えられる仕事」のほうが、私にとっては自分らしく働ける仕事なんだと分かってきました。

広く社会に影響を与えることも大事だけれど、その結果として、誰がどう変わったのかを見届けたい──より「手触り感がある仕事」を求めて、入省3年目で転職を決めました。

写真)厚生労働省時代の写真。渡部さん提供。

厚労省での経験は「大きな財産」

──当時は霞が関の長時間労働などが社会的にも問題視されていました。さらに新型コロナウイルスの感染拡大も重なった時期だったと思いますが、労働環境が転職のきっかけになった面もありますか?

もちろん、長時間の残業など「働き方」への疑問もありました。でも、強いやりがいを感じられていたら、私は厚労省に残っていたと思います。

長時間働くこと自体が嫌だったわけではなくて、私自身が「何かできている」という感覚を持てなかったことが転職の理由でした。

──結果的に2年で転職の選択をしていますが、厚労省への入省について、キャリア選択のミスマッチだったと感じていますか?

いえ、全く思っていません。私はその時々で、「自分はこれをやりたい」「これが自分にとって最適だ」と思える選択をしてきました。

厚労省は、私にとって一生勤務する場所ではなかったかもしれませんが、働いている方々は本当に大好きです。今でも同期や当時の上司とご飯に行くこともありますし、官僚として働いた経験は自分にとって大きな財産になっています。

初の転職「清水の舞台から飛び降りる気持ち」

──2020年7月、ノーコードで業務アプリを作成できるソフト「kintone(キントーン)」などを手がけるサイボウズに営業職で入社されました。数ある企業のなかからサイボウズを選んだ理由は?

第2新卒のような状態だったので、「ビジネスサイドなら何でもやります」という感じでいろいろな会社を見ていました。

会社選びの軸は、「この会社面白そう」「この人たちと働きたい」と思えるかどうかを重視していました。いろいろな企業の話を聞く中で、事業内容と社員の方々が一番面白いと思えたのがサイボウズでした。

もう少し具体的に言うと、サイボウズが手がけるキントーンは、「みんなにとって使いやすくある」ということを徹底的に大事に考えたサービスで、「これなら自信を持って売れるプロダクトだ」と思えました。また面接や面談で会う人たち全員が、「この人たちと働きたい」と思える方々で、会社との相性のよさを感じ、入社を決めました。

──国家公務員から民間企業への転職は、かなり心理的なハードルが高かったのではないでしょうか?

当時は清水の舞台から飛び降りるような気持ちでした(笑)。私は厚労省の同期のなかでは、初めての転職者だったのですが、かなり不安でした。

そこでFacebookなどで、同じように国家公務員から民間企業に転職した方や、地方公務員からサイボウズに転職した方などを探して、できるだけたくさん話を聞きました。彼らに「転職してどうでしたか」とたくさん質問して、自分の中の怖さを埋めていった感じです。

サイボウズで問われた「君はどうしたい?」

──サイボウズではどんな仕事をされていたんですか。

サイボウズでは4年半ほど在籍し、最初の3年間は営業担当でした。中小企業向けの提案や、官公庁向け提案、業界攻略など、かなり幅広く担当しました。

お客様への提案は楽しくてやりがいがありました。相手が何に困っていて、どういう提案なら相手にとっても、自社にとってもハッピーになるのか。そこを考えるのが楽しかったです。

──初めて民間企業で働くなかで、戸惑ったことはありましたか?

厚労省時代は、どちらかというと上から降ってくる仕事が多かったのですが、逆にサイボウズでは「君はどうしたいの?」といつも聞かれて戸惑いました。そう聞かれても、最初は全然答えられませんでした(笑)。

でも問い続けられる中で、自分の意思を少しずつ言語化できるようになっていきました。

もう一つ戸惑ったのが、働き方が「穏やか」になりすぎたこと。厚労省時代は月に100時間残業することもあって、明るい時間に退勤することはまずありませんでした。それがサイボウズに出勤した初日、仕事を終えて帰宅するときに「まだ日が出てる!」と驚いたのを鮮明に覚えています(笑)。

写真)サイボウズ時代の写真。渡部さん提供。

その後、サイボウズから転職しようと考えた理由は?

一つは出産が大きなきっかけになりました。育休中に、子どもと2人で過ごす時間が増え「子どもを預けてまで働く理由って何なんだろう」と問い直しました。

これまでは、自分の原体験をベースに「世の中を良くしたい」と考えていましたが、今度は「自分の子どもたちの世代に、どんな社会を残したいか」を考えるようになったんです。すぐに医療系の会社に転職しようと思ったわけではありませんが、おぼろげながら「医療や福祉の領域には大きなポテンシャルがある」と興味を持つようになりました。

産休・育休からの復帰後は、営業職から、営業企画やオペレーション構築の部署に異動になりました。新しい部署で働きながら、次のキャリアを考え始めたとき、改めて「医療や福祉という分野に挑戦したい」という内なる思いが強くなっていきました。

AIを医療にどう接続するか

──2025年3月にUbieに転職されます。なぜUbieを選んだのでしょうか?

転職の1年ほど前に、知人からの紹介で社員の方とお話したことがありました。すぐに転職するつもりではなく、情報収集の感覚でしたが、Ubieについては「意外とフランクな社風だな」と興味を持ちました。

それから半年ほどたった頃、Ubie側でも採用を強化するタイミングも重なり、Ubieへの転職を決めました。

──AIを活用し、病院経営の改善と診療の質向上を支援するサービス等で知られるUbieですが、Public Affairs(政策渉外)担当の渡部さんはどのような仕事を担当しているのでしょうか?

政策渉外がメインの仕事です。現在の大きなテーマは、「AIをはじめとする最先端の技術と政策をどう接続していくか」ということです。

国が法律やルールを作ることには時間がかかる一方で、AIの技術はどんどん進んでいます。現実の法律やルールと、AIの進歩のギャップをどう埋めていくのか──。それが大きなテーマになっています。

具体的には、AIを活用した最先端の事例を行政側に共有したり、逆に社会の流れや行政のスタンスをキャッチして社内で共有したりと、「外と中を接続する仕事」を担っています。

ロビー活動に近い動きもしますが、会社側の要望を伝えるだけではなく、行政側が本当に知りたい情報は何か、どういうルートで、どういう情報を伝えたらいいのか。お互いの立場を理解しながら対話する感覚です。

「こうしてほしい」と押し付けるのではなく、お互いの考えを共有しながら、より良い方向を探っていく仕事を続けています。

──どんな部分にやりがいを感じますか。

やりがいはすごくありますね。私がもともと強く持っている「世の中のために仕事をしたい」という思いと、厚労省を含めてこれまでのキャリアで培った「いろんな人と対話しながら未来を考える」という感覚が、今の仕事で全部つながっている感じがします。

「国家公務員は高い能力を持っている」

──サイボウズ、Ubieと民間企業でも活躍されていますが、霞が関の経験が活きていると感じますか?

官僚として身につけている能力は、自分では気付きにくいかもしれませんが、本当に高い能力だと思っています。

調整力や説明力、キャッチアップ力は、民間でも十分通用します。国家公務員の方から、民間への転職の不安について聞かれることも多いですが、「民間では通用しないんじゃないか」という不安は持たなくていいと思います。

国家公務員として働いていると「せっかく試験を突破して入ったんだから、辞めずに働き続けないと……」という気持ちになりがちです。でも、「自分に合う場所で働くこと」が、結果的には、世の中にとってもいいことなのではないかと思っています。

──最後に伺います。転職などキャリアの選択をするとき、渡部さんが大事にしていることはなんでしょうか?

人生における優先順位を意識しています。私はいま、夫婦共働きで子育ての最中ということもあり、「家族が幸せにいられること」を大事にしつつ、やりたい仕事に全力で挑戦したいと思っています。

実はもうすぐ第2子の出産も控えているのですが、Ubieは子育て中の社員も少なくないので、仕事と家庭のバランスをとりながら働ける環境に感謝しています。

「転職したい」と考えている方は私の周りにも多いですが、なぜ転職するのか、その理由が分からないという人も実はけっこう多いと感じます。でも、キャリアを考える上で「今の自分にとって本当に大事なものは何か」を考えることはすごく大切です。

私もそうでしたが、国家公務員から民間に転職すべきかどうかを悩んでいる人は、まずは民間で働く人の話を聞くなど、「外」の世界に積極的に触れてみるのがいいと思います。いろいろな人の話を聞くうちに、今の自分にとっての「優先順位」を実現できる仕事が、だんだんと分かってくるかもしれません。

VOLVE株式会社は 業種・職種を変えて転職する「越境キャリア」を支援しています。

公務員の民間転職に加え、一般的なコンサル転職、プロファームから事業会社への転職、
民間企業から公務員への転職など
を成功に導いてきました。

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